2026年版 Looker Studio 完全ガイド: Data Studio への再リブランドと Gemini AI まで徹底解説

By Codatum Team
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Looker Studio は、2026 年 4 月に再び "Data Studio" へ改名された Google の無料 BI ツールです。 Looker(エンタープライズ BI)と Looker Studio(無料 BI)の名前の近さがバイヤーを混乱させていた、という反省を踏まえた整理で、URL も lookerstudio.google.com から datastudio.google.com へ自動リダイレクトされる形で段階的に移行が進んでいます。

"We are sharing the next step in our mission to solve this challenge and reintroducing a beloved and familiar name, Data Studio (formerly Looker Studio)."
Google Cloud blog 2026-04-11

検索行動上はまだ「Looker Studio」が主流のため、本記事も Looker Studio 表記を主に使いつつ、リブランド以降の正式名称が Data Studio である点を都度補足します。再リブランド直後の 2026 年 4 月時点の情報を、公式ドキュメント・公式 blog・リリースノート・公開レビューを横断して整理した内容です。

もともと Looker Studio は 2016 年に Google Data Studio としてローンチされ、Google アカウントひとつで使い始められる手軽さと、BigQuery / Google Sheets / Google Analytics(GA4)などの Google データソースとの密結合、ドラッグ&ドロップで組み立てるレポート / ダッシュボードを軸に、マーケター・PM・経営層まで「コードを書かない人がデータに触れる入り口」として広く使われてきました。改名・再改名を経た現在もこの立ち位置は基本的に変わっていません。

主要な特徴

  • 無料で使える Google アカウントベースの BI:個人 Google アカウントでも Workspace アカウントでも、ログインすればすぐにレポート作成できる

  • Google データソースとの密結合:BigQuery / Google Sheets / GA4 / Search Console / Google Ads / YouTube Analytics など、Google 系データソースは公式コネクタで無料接続

  • ドラッグ&ドロップのレポート作成:図形・テキスト・チャート・コントロールをキャンバスに配置していく直感的なエディタ

  • 20 種類前後の標準チャートと Community Visualization:Scorecard / Time series / Bar / Pivot table / Funnel / Sankey / Geo / Treemap / Histogram (2026-01 追加) など標準で網羅、Boxplot / Word Cloud などサードパーティ実装は Community Visualization で追加可能

  • Conversational Analytics(自然言語チャット):2026-04 以降、全ユーザに開放された AI チャット型分析(実機 UI 表記は "Built with Gemini" / "Preview")

  • Looker Studio Pro / Data Studio Pro:Team Workspace、IAM 権限、Cloud Customer Care、Gemini in Data Studio などのエンタープライズ機能を有償で追加

  • 公開リンクと埋め込み:Public link / iframe embed / PDF export / メール配信 (Schedule) を標準装備

ターゲットユーザー

  • マーケター・PM・営業企画:GA4 や Google Ads の数字を毎週まとめる定型レポートをノーコードで組み立てる用途

  • 代理店 / コンサル:クライアント向けの月次レポートを大量に組み立て・配布する用途。Pro の Team Workspace でクライアントごとに権限分離しやすい

  • データチームの「軽め」レポート:BigQuery で整形したテーブルを部門に共有する第一段階の可視化として

  • エンジニアの SQL 中心ワークフローには寄せきっていない:本格的な SQL エディタ・notebook 型分析・programmatic な編集(API / Git 連携)はスコープ外で、SQL ヘビーな分析ワークフローを軸にする組織は、後述する代替ツールも併せて検討するとバランスが取りやすい

組織規模としては、個人〜中堅組織のマーケティング / オペレーション部門、および Google Cloud(特に BigQuery)にデータ基盤を寄せている組織との相性が特に良いツールです。

基本機能

Google データソースとの密結合

Looker Studio の強みのひとつは、Google 製プロダクトとの摩擦の少なさです。

  • Google Connector(無料):BigQuery / Cloud SQL / Google Sheets / Google Analytics 4 / Search Console / Google Ads / YouTube Analytics / Display & Video 360 など、Google が公式提供しているコネクタは追加課金なしで使える

  • Partner Connector(有料):Supermetrics、Windsor.ai、Catchr など外部 SaaS 経由で Facebook Ads / TikTok Ads / Salesforce / HubSpot 等に繋ぐ。ベンダーごとに月額課金で、料金は提供元によって異なる

  • Community Connector:Google Apps Script ベースで開発者が実装・公開できる

Google 系データソースに関しては「アカウントを切替えてポチポチ繋ぐ」だけで完了するため、GA4 や Search Console を毎週・毎月レポートしている運用には極めて使いやすい入口です。

参照:Available connectors(公式)

レポートエディタ:ノーコードで組み立てる

レポート作成画面は、PowerPoint / Google Slides に近い感覚のキャンバス型エディタです。

Looker Studio Sample Report preview
  • チャート / コントロール / テキスト / 画像 / 図形 をドラッグで配置

  • テーマ で色・フォント・スタイルを統一

  • ページ管理 で複数ページレポートを 1 つのファイルとして組み立て

  • 編集と表示の モード切替:編集中の表示状態のまま閲覧者に共有しないよう、view モードでの確認が標準ワークフロー

同じレポート内でページを切り替えると、Device Category(円グラフ)/ Top Countries(横棒 + 時系列)/ Operating System / Browser のように構成の異なるページが束で運用されます。

Looker Studio multi-page report (no tooltip)

ダッシュボード「だけ」の専用画面というより、「数字とテキストと図形を自由に組み合わせて見せる文書を作る」ニュアンスが強いのが特徴で、社内向けレポート・経営報告・代理店の月次レポートなどフォーマット重視の用途に強いツールです。

チャートタイプ:標準 20 種類超 + Community Visualization

公式 Types of charts in Looker Studio で標準提供されているチャートを、レポートエディタの "Add a chart" パレット(実機 2026-04 確認)に沿って整理すると次のとおりです:

Looker Studio チャートパレット (19 種類)
  • 数値・要約系:Scorecard / Bullet / Gauge

  • テーブル系:Table / Pivot table

  • 時系列・推移:Time series / Line / Area / Timeline

  • 比較・構成:Bar / Pie / Treemap / Funnel

  • 分布・関連:Scatter / Histogram(2026-01 追加)/ Sankey / Waterfall

  • 地理:Geo chart / Google Maps(point / heatmap / cluster など複数バリエーション)

Histogram は 2026-01-15 のリリースで追加されたチャートで、データの分布の形・中心・広がりを見たい用途で標準で使えるようになりました(release notes)。

標準で足りない可視化は、Community Visualization という形でサードパーティ実装を取り込むこともできます。Boxplot、Word Cloud、Calendar Heatmap、Radar など、標準にないチャートはここから追加できます。

フィルター・コントロールと Cross-data-source Filtering

レポート閲覧者がインタラクティブに絞り込めるよう、各種コントロールが用意されています。

  • 日付範囲コントロール:期間切替

  • ドロップダウン / リスト / スライダー:dimension / metric の値で絞り込み

  • 入力ボックス / Advanced filter:複雑な条件指定

2026-01-15 のリリースで追加された Cross-data-source Filtering は、異なるデータソースに紐づくチャートを 1 つのコントロールで連動させる機能で、複数の GA4 プロパティや BigQuery テーブルを 1 ページに並べているレポートで便利な機能になっています(release notes)。

Calculated Field と Data Blending

軽い計算と複数データソースの結合は、レポート内で完結できます。

  • Calculated FieldSUM(impressions) / SUM(clicks) のような算出式や、CASE 式によるラベル付けをデータソース内 / レポート内で定義

  • Data Blending:複数データソースを共通キーで結合(左外部結合相当)。1 ブレンドあたり最大 5 ソースまでの上限

Data Blending は便利な反面、ブレンドした分だけクエリが重くなるため、複雑な結合は BigQuery 側でテーブル化してから接続する方が安定します(後述の「押さえておきたいポイント」参照)。

共有:Public link / Embed / PDF / Schedule

ダッシュボード右上の共有メニューから一通りの共有手段が揃います。

  • ユーザ単位の共有:閲覧 / 編集の権限を Google アカウント単位で付与

  • Public link:URL を持つ全員が閲覧可能(ログイン不要)

  • iframe Embed:HTML に貼って外部サイトに埋込

  • PDF Export:単発でダウンロード

  • Schedule email delivery:定期的に PDF をメール配信。Pro では 1 時間粒度、無料版では日次以上の粒度で設定可能(release notes 2025-12-05

  • Slack 連携:Pro 限定で Slack channel / user に直接配信(release notes 2025-12-11

無料版で「URL をシェアして見せる」までは十分にカバーされており、社外向けの公開ダッシュボード用途で強さを発揮します。

2026 年の最大トピック:Looker Studio が "Data Studio" に戻った

2026-04-11、Google は本製品の名前を Looker Studio から Data Studio に戻すことを公式に発表しました。ドキュメント・URL の切替は 2026-04-16 から段階的にロールアウトされています。

Data Studio ホーム画面 (リブランド後)

公式アナウンス(Google Cloud blog 2026-04-11)より:

"We are sharing the next step in our mission to solve this challenge and reintroducing a beloved and familiar name, Data Studio (formerly Looker Studio)."

何が変わったか

項目

変更前

変更後(2026-04-16〜)

製品名

Looker Studio

Data Studio

Pro プラン名

Looker Studio Pro

Data Studio Pro

URL

lookerstudio.google.com

datastudio.google.com(旧 URL は自動リダイレクト)

AI ブランド

Gemini in Looker for Looker Studio

Gemini in Data Studio

既存レポート

全レポート・データソース・ユーザは自動で移行(ユーザ作業不要)

なぜ戻したのか

Google の公式説明と Cloud blog から読める背景は、Looker(エンタープライズ BI)と Looker Studio(無料の個人向け BI)の名前の近さがバイヤーを混乱させていたことに尽きます。両者は対象顧客もガバナンス・セマンティック層の有無も違う別製品で、名前が共通だと選定の混乱を生んでいたという反省です。

リブランド後は次のような棲み分けが明示されました:

  • Data Studio:個人 / チーム向け、ad-hoc・自由度の高いレポート、Google データソースのハブ

  • Looker:エンタープライズ向け、LookML によるセマンティック層、ガバナンスとエージェント機能

本記事の以降のセクションでは、SEO 検索ヒットを優先して "Looker Studio" 表記を残しますが、内容としては 2026-04-16 以降の Data Studio を指しています。

AI 機能:Gemini in Data Studio と Conversational Analytics は別物

2026 年の Looker Studio で活発に動いている領域が AI ですが、「Gemini in Data Studio」と「Conversational Analytics」は名前が似ていて混同しやすい別の機能です。

Gemini in Data Studio

Conversational Analytics

提供範囲

Pro サブスクリプション必須

全ユーザに開放(2026-04-16 以降)

入口

レポートエディタ右側の Gemini パネル

サイドバーの Conversational Analytics タブ

主な機能

Slides 連携、計算フィールド NL 生成

データに対して自然言語質問・回答とチャート生成

エージェント作成

BigQuery(Cloud Console)または Looker で作成、Data Studio に共有

ステータス

Preview

Preview

Gemini in Data Studio(Pro 限定)

Pro 限定の AI 機能で、レポートエディタ右側の Gemini パネル から呼び出します。一般提供されている主要機能は次の 3 つ:

  • Slides 連携("スライドを生成")— レポートのチャートを Google Slides に画像 + AI サマリ付きで一括挿入。"All visualizations" を選ぶと数秒で Drive 上にプレゼンテーションが生成され、Data Studio アドオン経由で Slides 側で続きの編集に移ります

  • 計算フィールド NL 生成 — 計算フィールドの「魔法の杖」アイコンから開く "計算フィールドの作成サポート" パネルで、自然言語で式を生成。AI に渡されるのは データソースのスキーマのみ(実データは送られない)

  • Code Interpreter for AI Analysis(Trusted Tester) — 自然言語の質問を Python コードに変換し、Conversational Analytics 内でより高度な分析・カスタム可視化を実行。現状は Trusted Tester のみで、Pro + Gemini 有効化に加えて申請が必要

Gemini in Data Studio Generate Slides
Gemini in Data Studio 計算フィールド

計算フィールドの方は Preview 段階で、データソースのスキーマが大きい場合などはエラーが返ることがあります。Code Interpreter は Trusted Tester 申請者のみが触れる段階で、現状の Pro $9 / user / project / 月の実体は Slides 連携と計算フィールド NL の 2 つ。Hourly scheduling や Slack 配信などの他 Pro 機能と組み合わせて初めてコスト合理性が出る位置付けです。

Conversational Analytics(全ユーザに開放、エージェント作成は BigQuery 側)

Data Studio のサイドバーから直接開ける chat-with-data 機能で、Pro 契約は不要です。ただし、エージェントは Data Studio 内では作成できず、BigQuery (Cloud Console) または Looker 側で作成して Data Studio に共有する設計です(旧 Gemini in Data Studio に紐づく legacy エージェントとは互換なし)。

実際の作成フローは BigQuery 側で:

  1. Data Analytics API with Gemini を有効化

  2. Agent エディタ を開く(左 Editor / 右 Preview の 2 ペイン構成)

  3. Knowledge sources に BigQuery テーブル / View / UDF を最大 50 個まで紐づけ

  4. Instructions(システムプロンプト相当)に文脈・略語・JOIN 関係を記述

  5. Preview で動作確認 → Save → Publish(BigQuery / API / Data Studio の 3 チャネル選択)

BigQuery Agent エディタ (wider crop)

Knowledge sources は「AI に見せていいテーブル」、Instructions は「用語と JOIN 関係の整理」を担う部分で、ここの仕込みが回答品質を決めます。Save → Publish までいくと、設定したエージェントが Data Studio の「会話分析」タブに出てきて、エンドユーザーが実際に質問を投げて使う形に切り替わります。

Data Studio 会話分析実利用画面

Google 公式も「ガバナンスのない生データに直接 generative AI を当てると inaccurate and inconsistent な結果になる」と認めており(Google Cloud Blog)、本格運用では Looker (LookML) のセマンティックレイヤーを下敷きにすることを推奨しています。Knowledge sources / Instructions / Verified queries / Glossary(実機にあるその他のセクション)にどれだけ semantic context を仕込めるかが、回答品質を決めるレバーになります。

利用可能な AI 機能(2026-04 時点)

機能

提供範囲

概要

Conversational Analytics chat(受信側)

全ユーザに開放

Data Studio で agent と会話、SQL→可視化まで自動

Conversational Analytics agent(作成側)

BigQuery(API 有効化)または Looker

Knowledge sources / Instructions を仕込んで自然言語に応答

Create Calculated Fields with NL

Pro + Gemini 有効化

自然言語の説明から計算フィールド式を生成

Add Content to Slides

Pro + Gemini 有効化

レポートのチャートを Google Slides に画像 + AI サマリ付きで挿入

Code Interpreter for AI Analysis

Pro + Gemini + Trusted Tester

自然言語の質問を Python コードに変換し、より高度な分析・可視化を実行

すべて Preview ステータス(Pre-GA Offerings Terms)。Preview 期間終了後は別途課金が発生する可能性があります。BigQuery agent を運用する場合は、BigQuery のクエリ課金は通常どおり別途発生する前提で見積もります。

公式ドキュメントは Conversational Analytics in Data Studio overview、エージェント作成手順は Create data agents | BigQuery、Looker 側の AI 機能は Gemini in Looker overview を参照してください。

バージョン別の主な更新(2025-11 〜 2026-04)

日付

機能

概要

2025-11-06

Pro Cloud Audit Logs

監査ログを Google Cloud console から閲覧可能に

2025-12-05

Hourly scheduling (Pro)

1 時間粒度の scheduled delivery / alert

2025-12-11

Slack integration (Pro)

Slack channel / user にレポート配信

2026-01-15

Histogram chart

データ分布を可視化する標準チャート

2026-01-15

Cross-data-source filtering

異なるデータソース間でコントロール連動

2026-01-15

Hide individual report components

チャート単位で viewer ごとの表示制御

2026-02-05

Show reasoning

Conversational Analytics の解釈ステップを表示

2026-02-05

Export charts as PNG / Link to chart

個別チャート単位の操作を強化

2026-04-16

Rebrand: Looker Studio → Data Studio

UI / ドキュメントを "Data Studio" 表記へ

2026-04-16

Conversational Analytics 全ユーザ開放

Pro / Gemini 有効化なしでも利用可。BigQuery data agents 対応

2026-04-16

Policy Users for team workspaces

Workspace 共有ポリシー管理(Pro)

2026-04-16

Enhanced table export (2,000 rows)

テーブル可視化のダウンロード / Schedule 時に最大 2,000 行へ拡張

詳細は公式 release notes を参照してください。

価格体系(2026 年 4 月時点)

プラン

価格

デプロイ

主要機能

対象

Looker Studio (Data Studio)

無料

クラウド

基本 BI 機能、Public link / Embed、PDF Export、Conversational Analytics

個人・小〜中規模チーム

Looker Studio Pro (Data Studio Pro)

$9 / user / project / 月(年間契約)

クラウド + GCP プロジェクト紐付け

Team Workspace、IAM 権限、Hourly scheduling、Slack 配信、200 schedule、Gemini in Data Studio、Cloud Customer Care

代理店・エンタープライズ

Looker

カスタム見積

専用環境

LookML、ガバナンス、エージェント機能

大規模エンタープライズ

最新の価格は Looker Studio 公式ページ を参照。

価格について押さえておくと判断しやすい点:

  • 無料版でも実用的:レポート作成・公開・埋込・PDF Export・日次以上のスケジュール配信まで無料層に含まれる

  • Pro は per user × per project の課金:ユーザ数だけでなく、ライセンスを紐づける Google Cloud プロジェクト数にも比例する。複数のクライアント環境を別 GCP プロジェクトで管理している代理店などは、見かけの $9 より実コストが膨らむケースがある(kodalogic 解説

  • 30 日間無料トライアル:Pro の主要機能をフル機能で評価できる

  • Pro license は user 数で課金:ライセンスが紐づくユーザは「使っていなくても」課金対象になるため、退職者などのライセンス整理は運用ルールとして必要

公式の概要は Data Studio Pro subscription overview にまとまっています。

導入前に押さえておきたいポイント

Looker Studio は ノーコードで Google データソースを可視化する第一歩 として完成度が高い一方、長期運用で踏みやすい構造的な落とし穴が 4 点あります。

論点の踏み込みには Coefficient の落とし穴 7 選Data Dashboard Hub の権限設計解説、コスト面は プリンシプル社の BigQuery アンチパターンG-gen のコスト最適化記事 が参考になります。

1. 権限管理が「Editor / Viewer の 2 階建て + Google アカウント前提」

権限は IAM ベースで Custom roles 非対応Data Dashboard Hub)。「閲覧はできるが共有はできない」のような中間ロールは作れず、Owner's Credentials は個人アカウントに紐づくため、担当者の異動・退職時にはレポートの所有者移管が必要になります(Graphed)。

外部ユーザーへの共有も Google アカウントが前提で、フリーメールや顧客社内メールに直接配信する経路はありません。代替として Google Spreadsheet に email list を作り blend で行レベルフィルタする運用は知られていますが、リスト管理・閲覧ログ・Spreadsheet 自体の共有設定をそれぞれ別系統で運用することになり、検討軸が増えます。

2. SQL を中心に運用するチームでは「二重管理」が発生しやすい

Custom Query は レポート / データソースに 1:1 で埋め込まれ、再利用機構がありません。同じ KPI ロジックを複数レポートで使う場合は各々にコピーすることになり、定義変更時はレポート単位で更新する形になります(Optimize Matter)。Calculated Field も集計値と非集計値を同じ式に混ぜられない制約があり、複雑な指標は BigQuery 側の view に切り出すアプローチが現実的です(Google Cloud 公式)。dbt や Git で SQL を一元管理しているチームでは、Looker Studio 側のレポート内 SQL との同期管理が運用コストとして上乗せされます。

3. モバイル / 埋め込み / ブランディングは「ラスト 1 マイル」に制約が多い

公式モバイルアプリは Pro 限定で、Responsive Layout も「1 ページ 1 チャート、線・矢印追加不可」などの制約があります(databloo)。無料層の埋め込みには "Made with Looker Studio" ロゴが表示される仕様で(Looker Studio thread)、SaaS 顧客向けプロダクトに組み込む際の見た目の調整余地は小さめです。カスタムフォントは Google Fonts のみ、Theme はレポート単位で閉じる、CSS / HTML カスタマイズは非対応のため、プロダクト側のデザインシステムにそのまま合わせるのは難しい構成です。

4. ユーザーアカウント前提の設計でキャッシュが効きづらく、コストが伸びやすい

Looker Studio は 基本的に閲覧者の Google アカウントで権限管理する設計で、Viewer's Credentials を選ぶと公式に "each viewer of the report has their own data freshness settings" と明記されています(公式: Manage data freshness)。閲覧者ごとにキャッシュが独立するため、フィルタ操作・ページ遷移のたびに BigQuery へクエリが投げ直され、視聴者数 × 操作数で課金が増加します。プリンシプル社の事例では「数円のはずだった BigQuery の課金が 数十万円に増加した」というケースが報告されています(プリンシプル社解説)。

サービスアカウント接続を選べば共有キャッシュが効きますが、Google Cloud は BigQuery Row Access Policy など行レベルセキュリティでの運用を公式に案内しており、その設計に沿うと自然と Viewer's Credentials を選ぶ構成になります。Pro にしてもクエリ性能や行数上限は改善されない(Beastmetrics)ため、性能・コスト最適化を目的とする場合は別軸で検討する必要があります。

いずれも Looker Studio 単体ではなく、役割の切り分けを考えると活かしやすくなる観点です。後半の代替ツールも併せて検討するとバランスが取りやすくなります。

セットアップ・運用

Looker Studio はセルフホストの選択肢がない 完全 SaaS 型のツールです。

  • lookerstudio.google.com にアクセス(リブランド後の正式 URL は datastudio.google.com で、旧 URL は自動リダイレクト)

  • Google アカウントでログイン

  • 「+ Create」から Report / Data source / Explorer を選択

  • データソースに BigQuery / Google Sheets / GA4 などを接続して開始

無料版は数分で初期レポートを作成できます。Looker Studio Pro を有効化する場合は、Google Cloud プロジェクトに紐づける形で課金設定が必要になります。

公式ガイドは、操作で詰まったら ヘルプセンター、データソース接続のリファレンスは Connectors / Data Sources / Credentials、Pro の申込・概要は Looker Studio 公式ページ にまとまっています。

代替ツール

Looker Studio の守備範囲を超える用途や、別のスタンスで分析ワークフローを組み立てたい場合の代替を整理します。選定で迷っている場合は、データ基盤全体の文脈で整理するのが近道です。

Codatum

SQL ベースのコード中心型データ分析プラットフォーム。Notebook 形式で SQL の作成・可視化・解説テキストを 1 つのドキュメントに統合し、AI エージェントが SQL の作成と実行までを支援する。BigQuery / Snowflake / Redshift / Databricks など主要 DWH に統一インターフェースで接続でき、Signed Embed による SaaS 組込にも対応。

Metabase

オープンソースベースの BI ツール。Visual Query Builder と x-ray による auto-insight、v0.60 で OSS 化された AI / Metabot を備え、SaaS / セルフホストの選択肢がある。詳しくは 2026 年版 Metabase 完全ガイドを参照。

Redash

SQL クエリを軸にダッシュボード・レポートを組み立てる OSS BI。Databricks 買収後はコミュニティ主導で開発が続いており、73 種類のデータソースと SQL ファーストのワークフローが特徴。詳しくは 2026 年版 Redash 完全ガイドを参照。

Microsoft Power BI

Microsoft の BI 製品。Excel / Azure / Microsoft 365 などとの連携面が特徴で、Microsoft 圏の組織との相性が良い。詳細は 公式サイト を参照。

Tableau

Salesforce 傘下の商用 BI 製品。エンタープライズ向けの高度な可視化と分析機能、Tableau Cloud / Tableau Server による展開オプションが特徴。プランや価格は 公式 pricing を参照。

Looker

同じ Google 傘下のエンタープライズ BI。LookML によるセマンティック層、ガバナンス、エージェント機能を備え、Looker Studio とは異なるレイヤーを担当する。詳細は 公式サイトを参照。

まとめ

Looker Studio(現 Data Studio)は、Google アカウントさえあれば無料で始められ、Google データソースとの密結合を最大の強みにした BI ツールとして、引き続き優れた選択肢です。2026 年の Data Studio への再リブランドは、Looker と Looker Studio の役割の混乱を整理する動きで、製品としての立ち位置は「個人〜中規模チームの軽快な可視化レイヤー」にむしろ純化されました。Conversational Analytics の全ユーザ開放、Histogram などの新チャート、Hourly scheduling や Slack 配信といった Pro の運用機能の充実も、定型レポート運用のボトムアップに効いています。

一方で、前章で触れたとおり Viewer's Credentials ではキャッシュが viewer ごとに独立する / Pro の per user × per project 課金は積み上げて確認 / AI 機能は Preview 中で将来課金の可能性、という 3 点は、選定段階で役割の切り分けを決める材料になります。

もしこの 3 点にかっちり向き合いたい場合、選択肢の一つとして Codatum があります。SQL + 可視化 + Markdown が並ぶ notebook 型の UI、AI アシスタントによる SQL 作成支援、実行まで任せられるエージェント、モダンな協業機能と Signed Embed を備えており、Looker Studio の守備範囲の隣 — SQL 中心の分析ワークフロー、エージェント型の自動化、SaaS への分析画面組込 — を埋める形で使えます。Google エコシステムを起点にしつつ、データ基盤全体を整えるフェーズに入った場合に、Looker Studio と Codatum を役割で使い分けるか、併用で検討する価値があります。