ビジネスの意思決定において、最新のデータへの素早いアクセスと柔軟な分析が、これまで以上に重要になっています。事前に用意された定型のレポートやダッシュボードだけでなく、状況に応じて必要なデータに直接アクセスし、新たな視点で分析できる環境が求められているのです。
この「データへの即時アクセスと柔軟な分析」を実現する手段として、SQLベースのデータ分析基盤が注目を集めています。本記事では、Airbnbが開発しオープンソースとして広く普及しているApache Supersetと、最新のテクノロジーでシームレスなデータ分析を実現するCodatumを比較します。それぞれのツールがどのようにして迅速なデータアクセスと柔軟な分析を可能にし、組織のデータ活用を加速させているのかを詳しく見ていきましょう。
Apache Supersetとは
Apache Supersetは、Airbnbで開発され、その後Apacheソフトウェア財団に寄贈された、オープンソースのモダンなデータ探索・可視化プラットフォームです。多彩なチャート作成機能と直感的なUIを備え、多種多様なデータソースに対応したSelf-serve BIプロダクトとして、世界中の組織で活用されています。
Supersetは次のような強みを持っています。
豊富なチャート機能: 100種類以上の視覚化オプションを提供
使いやすいUI: ドラッグ&ドロップによる直感的なチャート作成
多様なデータソース: 主要なデータベースやデータウェアハウスに対応
セルフサービス分析: 技術者でなくてもデータ分析が可能
しかし、以下のような課題も存在します。
クエリ管理の制限: コードの再利用や参照が難しく、複雑な分析の構築に時間がかかる
共有機能の不足: 外部ゲストへの安全な共有方法が限定的
複雑な権限管理: 詳細な権限設定が必要で、管理が煩雑
分析プロセスの記録: データ分析のストーリーを記録・共有する機能がない
機能比較表
両ツールの主要な機能を詳しく比較してみます。
機能 | Codatum | Superset |
SQL管理/SQLエディタ | 高度な機能あり | 基本的な機能 |
データセットの検索 | 👌 | △ |
SQLの分割・参照 | 👌 | × |
フォルダ管理 | 👌 | × |
テンプレート機能 | △(代替手段あり) | 👌 |
ダッシュボード | 充実 | 充実 |
基本機能 | 👌 | 👌 |
データ深堀り | Cross-filter (参考リンク) | |
Notebook | 👌 | × |
共有機能 | 多彩な共有機能 | 限定的な共有機能 (セキュリティ懸念あり) |
外部ゲスト共有 | 👌 | × |
グローバルパブリッシュ | 👌 | 👌 |
White label embed | 👌 | × |
対応データソース | × BigQueryのみ | 👌 多数対応 |
権限管理 | シンプルなRole管理 | 複雑な個別設定 |
カタログ機能 | 👌 | 👌 |
AIアシスト | 👌 | × |
提供方法 | SaaS | OSS, Self-hosting |
セキュリティ
Supersetでは、Jinjaテンプレートを使用したダイナミックなSQL生成が可能ですが、これにより設計上、セキュリティ上のリスク (ex: SQL Injection) が排除できない可能性があります(参考リンク)。そのため、外部共有が要件にある場合などには特に注意が必要です。
一方、Codatumでは、セキュリティを重視し、標準SQLの機能を活用した代替手段を提供しています。これにより、安全性を確保しながら柔軟なクエリ作成が可能です。
SQL管理/エディタ機能
Supersetでは、基本的なSQL実行環境は提供されているものの、SQLの分割や参照機能がないため、複雑なクエリの管理が難しく、データセットの検索も限定的です。また、フォルダ管理機能がないため、大量のSQLを整理する際に課題が生じます。
一方Codatumでは、SQLの分割・参照機能による複雑なクエリの整理や、データセット(テーブル、カラムを含む)の横断的な検索、フォルダによる体系的なSQL管理を提供しています。これにより、チームでのSQL管理や再利用が効率的に行えます。
共有と権限管理
Supersetの権限管理は非常に詳細な設定が可能ですが、その分だけ管理が複雑になります。特に、個別のクエリ(データセット)レベルでの権限設定が必要なため、組み合わせが多岐にわたり、管理が現実的ではなくなる可能性があります。
Codatumは、ロールベースの権限管理を採用し、セキュリティを確保しながらも管理の簡素化を実現しています。また、外部ゲストへの安全な共有機能も備えています。
AIアシスト機能
CodatumのAIアシスト機能は、SQLクエリの作成から最適化まで、幅広いサポートを提供します。これにより、SQLの初心者でも複雑な分析が可能になり、熟練者の生産性も向上します。
Note: SupersetのHosting ServiceであるPresetにはAI Assist機能があるようです。(参考リンク)
どのような時にどちらを選択すべきか
Supersetが適している場合
データの可視化重視:
豊富な可視化オプションが必要
ダッシュボード中心の運用
複数データソースの統合が必要
Self-Hostingが必要
Codatumが適している場合
素早い分析サイクルが重要:
アドホックな分析が頻繁
運用監視やトラブルシューティング
柔軟なデータ探索が必要
効率的なSQL管理が必要:
大量のSQLを管理
チーム間でのコード共有
分析パターンの再利用
分析知見の即時展開:
外部との素早い共有
分析プロセスの記録
ナレッジの蓄積と活用
まとめ
データ分析ツールの選択は、組織のニーズや目標によって大きく異なります。Apache Supersetは、充実した可視化機能と柔軟なデータ探索機能により、ダッシュボード中心のデータ活用を支援します。一方、Codatumは、高度なSQLマネジメント、AIによる支援、シームレスな共有機能により、より機動的なデータ活用を実現します。
自社でインフラ管理を行う必要があり、コスト効率を重視する場合はSupersetが良い選択となるでしょう。一方、生産性の向上や、チーム間・組織間でのスムーズな連携を重視する場合は、Codatumの導入を検討することをお勧めします。